近年、外国人正社員雇用を検討する企業が増えています。
「アルバイトとして雇用している外国人に長く働いてほしい」「即戦力として外国人を正社員として迎え入れたい」
と考えている企業様も多いのではないでしょうか。
本記事では、外国人正社員雇用の具体的な方法や、企業側が得られるメリットを詳しく解説します。また、採用時に雇用主が気をつけるべきポイントについても触れ、スムーズな雇用を実現するための知識を提供します。
最後に、実際に外国人正社員雇用を進めるための手順を解説します。この記事を読むことで、採用活動の第一歩をスムーズに踏み出せるようになります。
目次
1. 外国人を正社員として雇用できる在留資格
日本にはさまざまな在留資格があり、2023年12月時点で約320万人の外国人が日本に在留しています。企業が外国人正社員雇用を検討する際、まず理解しておくべきなのが「どの在留資格で正社員として働けるのか」という点です。
よく知られているのは「技術・人文知識・国際業務」ビザですが、定住者・永住者・配偶者・技能ビザなども正社員としての就労が可能です。ただし、「技術・人文知識・国際業務ビザ」や「技能ビザ」は、取得時に定められた職務内容に制限があります。例えば、中華料理の調理師として取得した技能ビザでは、イタリア料理店での勤務はできません。このような制限があるため、外国人正社員雇用の際には十分な確認が必要です。
一方で、「定住者」「永住者」「配偶者ビザ」を持つ外国人は、日本人と同じ条件で採用することができます。これらの在留資格を持つ人材は、職務の制限がなく幅広い業種での外国人正社員雇用が可能になります。
このように、外国人正社員雇用のニーズは高まっており、適切な在留資格の理解が優秀な人材確保につながります。採用の際には、各在留資格の特性を把握し、スムーズな雇用を実現しましょう。
2. 外国人の正社員雇用の3つのメリット
外国人を正社員雇用するメリットは、以下の3つです。
◾️人材不足が解消できる
◾️優秀な人材を雇用できる可能性があがる
◾️社内のグローバル化が進む
外国人を正社員雇用した企業にどのようなメリットをもたらすのか、それぞれ具体的に解説します。
人材不足が解消できる
外国人正社員雇用は、企業の人材不足解消に大きく貢献します。少子高齢化や働き方の多様化が進むなか、多くの企業が若手人材の確保に苦戦しており、新卒で採用しても数年で転職されるケースが少なくありません。
そこで注目されるのが、外国人労働者の正社員化です。特に、留学生アルバイトを育成すれば、即戦力として活躍できる外国人正社員雇用が可能になります。留学生アルバイトを正社員として採用する際には、在留資格を「特定技能」や「技術・人文知識・国際業務」に変更申請することで、雇用を継続できます。
さらに、2019年には「特定技能」ビザが新設されました。これにより、これまで外国人労働者が従事できなかった飲食業や建設業などの職種でも、外国人正社員雇用が可能になっています。
留学生アルバイトを雇用している企業にとっては、スキルを持った外国人をそのまま正社員として迎え入れるチャンスです。適切な在留資格への変更を行うことで、人材不足の解消につなげましょう。
優秀な人材にマッチできる可能性があがる
外国人正社員雇用を検討することで、企業は優秀な人材とマッチできる可能性が高まります。外国人労働者のなかには、日本の文化や安定した就労環境に魅力を感じ、長期的に働きたいと考える人も少なくありません。また、専門的な技術や知識を持った外国人材も多く、即戦力としての活躍が期待できます。
さらに、国内だけでなく海外にも目を向けて採用活動を行うことで、求職者の選択肢を広げられます。特に、海外からの求職者は、日本で働くことへの強い意欲や覚悟を持っているケースが多く、モチベーションの高い人材を確保できる可能性が高まります。
外国人正社員雇用を成功させるためには、適切な在留資格の確認や企業の受け入れ体制の整備も重要です。グローバルな視点を持ち、多様な人材の活用を進めることで、企業の成長につなげましょう。
社内のグローバル化が進む
社内に外国人が在籍していることで、社内のグローバル化促進も見込めます。
日本人社員のみで構成されている場合、海外コミュニティや最新ニュースなどの情報がスピーディに入ってこないケースも少なくありません。
しかし、外国人が在籍していると、日本人では入れないコミュニティからの情報や、世界の最新技術などをいち早くキャッチしやすくなります。
さらに外国人ならではの感性・思考から、海外向け新サービス考案、事業の海外進出などの足掛かりになることも期待できるでしょう。
3. 外国人を正社員雇用する際の注意点
外国人の正社員雇用時には、職種制限という注意点があります。
在留資格によって、就労職種や時間に制限があります。
以下の表を参考に、在留資格の種類に応じた条件をチェックしてみましょう。
【在留資格別採用ポイント】

外国人正社員雇用を進める際には、在留資格ごとの職種制限を理解することが重要です。例えば、「技術・人文知識・国際業務ビザ」や「技能ビザ」を持つ外国人は、認定された職種でのみ就労が可能です。基本的に、日本人社員と同等かそれ以上の待遇での雇用が求められ、主にホワイトカラー職に限定されます。
一方、「永住者」「日本人・永住者の配偶者」「定住者」「留学ビザ」を持つ外国人は、職種の制限がありません。そのため、企業は特別な手続きなしに、柔軟な外国人正社員雇用が可能です。
法令で定められた労働条件を整理する
外国人も日本人と同様、法令で定められた労働条件を整備することが不可欠。
外国人も日本人と同様、日本の労働法が適用されます。
◾️最低賃金、勤務時間、社会保険など
◾️特定技能の外国人については、自社の社員と同水準の待遇が求められます
【外国人の待遇が日本人と同一であるべき理由】
- 法律で定められている
- 優秀な外国人材の確保のため
- 日本人の採用と同様、待遇が労働者のモチベーションに影響
社内の受け入れ体制を構築する必要がある
◾️留学生アルバイトの正社員化
留学生アルバイトなどを正社員に格上げする時は、在留資格変更が伴うため、企業のサポートが必要。
◾️10人以上の雇用では責任者をたてる
常時10人以上の外国人労働者を雇用する際は、雇用労務に関する責任者をたてる必要があります。
責任者は雇用条件の管理や行政との連絡など、労務管理に関わる業務を行わなければなりません。
◾️生活環境の確保
生活環境に関しても、住宅や銀行口座開設などのサポート体制が必要です。
宗教や文化の違いに対する配慮が必要
日本人と外国人における宗教・文化の違いに配慮する。
日本人と外国人における宗教・文化の違いとして、下記のような点が挙げられます。
お祈りや食事への制約がライフワークになっている外国人労働者も多くいます。そのため、ほかの日本人社員への理解を深めることが大切です。文化的な違いに関しても、外国人労働者が働きやすい環境を整えなければ本来のポテンシャルを発揮できない恐れがあります。
海外文化や宗教観念について、日本人社員への研修会を開くことも検討しましょう。
✅決まった時間にお祈りをする
✅食べられるものに制限がある
✅家族を大切にするため残業はしない
4. 外国人正社員の具体的な採用方法
正社員として採用する方法は、主に4つ
注意点として、どの採用方法においても国籍を条件にするのはNGです。外国人労働者を雇用する際、事業主には雇用管理の努力義務があります。
そのひとつとして、国籍とは関係なく公平な採用選考をするというルールがあり、事業者はこれを守らなければなりません。
方法1 求人媒体からの採用
求人媒体は、就労資格のある外国人労働者を低コストで採用できる方法です。
発生する費用は求人媒体への掲載費用がメインなので、ほかにコストをかけずに済むでしょう。
WORK JAPANでは、45,000円から求人掲載をはじめられます。
就労資格をもつ外国人をアルバイト・正社員のどちらでも選べるため、希望する雇用形態の人材を採用することが可能です。
方法2 人材紹介会社からの紹介
外国人人材紹介会社を利用すると、経験や実績、必要な日本語の能力など、希望条件に合わせた人材を紹介してもらえます。
ただし、採用者が決定した場合、理論年収に手数料の料率をかけた紹介料が発生します。
理論年収は採用決定者の1年分の給与、諸手当(交通費を除く)、報奨金などを足した年収です。
紹介料率は35%程度が相場となっています。
年収が400万円の人の場合、紹介料は140万円
たとえば、理論年収400万円の外国人の採用が決まった場合、
料率が35%とすると紹介料は140万円です。
希望した能力のある人材とマッチしやすいですが、採用コストは高い傾向にあるので注意しましょう。
方法3 留学生アルバイトの在留資格を、正社員として雇用可能なビザに変更する
外国人を留学生アルバイトで採用し、その後、正社員として雇用可能なビザに変更する、という採用方法もあります。
在留資格を変更する場合、以下のような要件をクリアしなければなりません。
・大学や専門学校などを卒業している
・大学や専門学校での専攻内容と業務内容に関連性がある
・関連する業務に従事していた経験がある
・反復訓練で従事できる肉体労働、単純作業ではない
また、留学生アルバイトの在留資格を技術・人文知識・国際業務へ変更し、正社員雇用した事例は増えています。
留学生アルバイトの在留資格を技術・人文知識・国際業務へ変更し正社員雇用した事例
- 通訳、翻訳アルバイトから、正社員として海外営業へ従事
- 貿易事務アルバイトから、海外向け製品の生産や輸入業務へ従事
- 外食産業部門のアルバイトから、海外事業部に配属され輸出業務へ従事
方法4 自社で採用ページを作成する
自社で採用ページを作成すれば、外国人求職者へダイレクトに採用情報(職種や必須技能、社内の雰囲気など)を届けられます。
すでに外国人労働者を雇用している場合、インタビュー内容も載せると就労環境がより明確に伝わります。
掲載コストがかからず、SNSなども利用すればより多くの求職者に採用情報をみてもらえる方法です。
ただし、自社の採用ページは期待する結果を得られるまでの制作コストがかかります。
求人媒体より高コストになる可能性があることも理解しておきましょう。
5. 外国人の正社員雇用まとめ
外国人を正社員として採用できる環境は、国内でも整いつつあります。
留学生から正社員として雇用した事例もあり、人材不足解消や社内のグローバル化といった恩恵を受けている企業も多いといえます。
ただし、採用時は宗教や文化の問題、受け入れ体制の構築など準備しなければならないこともあるので注意しましょう。