調査概要
⚫︎調査手法:データ分析、求人・応募・採用データの集計
⚫︎調査対象:日本国内の身分系在留資格の外国人求職者(定住者・永住者・配偶者ビザ保持者)
⚫︎データ取得期間:2024年7月〜2024年12月
⚫︎有効回収数:5,602件
調査の背景
日本の労働市場において、外国人労働者は重要な役割を担っています。
『身分系在留資格』(定住者・永住者・配偶者ビザ)を持つ外国人求職者は、就労制限がなく、長期的な雇用が可能という大きなメリットがあります。
また、身分系在留資格の外国人求職者は、日本人と同様に働ける点が特徴です。長期的な雇用が可能であり、1日あたりの労働時間にも制限がなく、正社員・契約社員・パート・アルバイトなど、あらゆる雇用形態での就業が可能です。そのため、企業が求める人材要件に柔軟に対応しやすく、幅広い職種での活躍が期待できます。
本コラムでは、身分系在留資格の外国人求職者の実態を明らかにし、彼らの雇用の可能性について解説します。
身分系在留資格の外国人求職者の主な出身国は?

身分系在留資格の外国人求職者の出身国を分析すると、
フィリピン(43%)、
ブラジル(8%)、
パキスタン(6%)、
アメリカ(5%)
といった国々が上位に挙がります。
特に、フィリピン出身者が多い背景として、フィリピンはクリスチャンが多く、信仰心が強いことからホスピタリティ業界(介護・接客など)での適性が高いと考えられます。世界的にも、フィリピン人は介護やメイド職で活躍している事例が多く、日本においてもこの傾向は見られます。
また、日本語能力に関しても、一定のレベルを持つ人材が多く、
「基本会話レベル(43%)」や
「日常会話レベル(30%)」
が全体の約7割を占めます。
これにより、企業の採用ハードルが下がり、より多くの職種で活躍できる可能性が高まります。
日本語が話せない外国人でも就職できるのか?

データによると、日本語レベルは以下のようになっています。
流暢(Fluent) … 4%
ビジネス会話レベル(Business Conversation) … 5%
日常会話レベル(Daily Conversation) … 24%
基本会話レベル(Basic Conversation) … 47%
ほとんど話せない(Survival Japanese) … 21%
このデータから、約7割の求職者は「基本会話レベル」以上の日本語力を持ち、最低限のコミュニケーションが取れることがわかります。しかし、流暢な日本語を話せる人材は全体の約10%に過ぎず、それだけでチームを構成するのは難しいという課題があります。
企業が成功している採用の工夫
流暢な日本語を話せる求職者が限られている中で、「日本語が堪能な人材をリーダーとして採用し、その人が同郷の日本語レベルが低い人材を指導する」という形で、成功している企業もあります。このモデルを活用することで、企業は単に「流暢な人材を取り合う」のではなく、全体の採用数を増やしながら現場での円滑な業務遂行を可能にしています。
日本語レベルと適職
・流暢・ビジネス会話レベル
→ 接客業・営業・オフィスワーク・マネジメント職(リーダー採用の候補)
・日常会話レベル以上
→ ホテル・観光業・飲食業・介護職など、対人コミュニケーションが求められる職種
・基本会話レベル以下
→ 倉庫・工場・建設・清掃など、指示がシンプルで日本語が流暢でなくても問題のない職種
身分系在留資格の外国人求職者はどの業種で採用されているか?

求職者の応募状況を分析すると、
倉庫(34%)、
ホテル(15%)、
工場(8%)、
空港(7%)、
オフィス(7%)
といった業種が人気を集めています。
物流や製造業、観光関連業種では特に関心が高いです。
一方、実際の採用データを見ると、倉庫(80%)での採用が圧倒的に多く、倉庫作業は業務内容が明確であり、言語の壁が低いため、企業側も外国人求職者を受け入れやすいと考えられます。
しかし、ホテルや飲食業、オフィス業務などへの応募も多いことから、企業側の採用基準を柔軟にすることで、外国人求職者の活用の幅を広げられる可能性があります。
身分系在留資格の外国人求職者をどのように活用すればよいか?
身分系在留資格(定住者・永住者・配偶者)の外国人求職者は、長期的な雇用が可能
就労制限がないため、パート・アルバイトだけでなく、正社員としての採用も可能。企業の人材不足解消につながります。
言語スキルに応じた業務分担を意識する
倉庫・工場などのシンプルな業務では日本語力がなくても活躍できますが、接客業では英語や母国語を活かすポジションを用意するなど、多様な働き方を検討することが重要です。
採用基準を柔軟にし、多様な人材を活用する
応募データを見ると、「ホテル」「空港」「オフィス業務」などの業種にも関心が集まっています。求職者のスキルに応じた職務設計を行うことで、より多くの優秀な外国人を採用できます。
また、数は多くないものの、運転免許を取得している求職者もおり、ドライバーとしての採用事例も増えてきています。特に、物流業界や観光業では、外国人ドライバーの需要が高まっており、企業側の受け入れ態勢次第でさらなる活用が期待できます。
📌身分系在留資格(定住者・永住者・配偶者)の外国人求職者が関心を持っている職種ランキング
1. 倉庫(Warehouse) … 34%
2. ホテル(Hotel) … 15%
3. 工場(Factory) … 8%
4. 空港(Airport) … 7%
5. オフィス業務(Office) … 7%
6. 飲食店(Restaurant) … 6%
7. 建設(Construction) … 5%
8. カフェ・飲食店(Restaurant/Cafe) … 4%
9. ビルメンテナンス(Building Maintenance) … 3%
10. 病院・介護(Hospital) … 2%
日本の労働市場における外国人採用の課題とは?
企業側の理解不足
身分系在留資格(定住者・永住者・配偶者)の外国人求職者の外国人求職者の雇用のしやすさを知らない企業が多い。
日本語スキルの過度な期待
「流暢な日本語が必須」と考えることで、採用機会を狭めている。現状では「流暢な日本語を話せる人材は取り合いになっている」ため、企業が求めるレベルの人材を確保するのは困難。
業務適性のミスマッチ
本来は適性のある職種でも、求職者のスキルを活かしきれていないケースがある。
まとめ:身分系在留資格の外国人求職者の雇用は企業の新たな選択肢
今回の調査データから、身分系在留資格(定住者・永住者・配偶者)の外国人求職者の外国人求職者は、日本人と同様に働けることが最大の強みであり、長期雇用が可能な人材です。倉庫や建設業だけでなく、オフィス業務や介護、飲食業など、多様な職種で採用が進んでいる点も特徴です。
また、応募データを見ると、観光業やオフィスワークなどにも高い関心があるため、採用基準を見直し、多様な外国人材の活用を進めることで、企業の人手不足解消に寄与できます。
今後、企業が外国人採用を進めるためには、「言語スキル」「業務適性」「長期雇用の可能性」を軸に、柔軟な採用戦略を構築することが求められるでしょう。